エージェント基盤・プロトコル

オーケストレータ/ワーカーとは|作業数が読めない仕事は、固定手順では4件中2件しか通らなかった

オーケストレータ/ワーカーとはどういう構成なのか固定した手順では何が足りないのかどんなときに使うべきなのか

作業を3つに分けて順に流す。手順が決まっているなら、これで足ります。ところが作業がいくつ必要か、始める前には分からない仕事があります。

そこで使うのが、中心のAIがその場で分解して割り振る構成です。今回は数えました。固定手順では4件中2件しか対応できず、動的に分ける構成では4件すべてが通りました

この記事の要点

  • 中心のAIが作業を分解し、担当に割り振り、結果をまとめる構成
  • 実測では、固定手順が4件中2件、動的分解が4件すべてに対応できた
  • 代償は呼び出し回数。5回と32回の差が出た
  • 使うのは必要な作業が事前に予測できない場合だけ

固定手順では4件中2件しか通らなかった

作業量が読める仕事と読めない仕事を4件用意しました。固定手順は前者しか扱えず、動的分解はすべてを扱えます。

オーケストレータ/ワーカーの使いどころを確かめるため、実際に数えました。4種類の仕事を用意しています。

定型の請求書処理と問い合わせの一次対応は、必要な作業が事前に分かります。バグ修正と競合調査は、始めるまで分かりません。

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仕事ごとに必要だった作業数と、2つの構成の対応

仕事                    必要な作業  固定手順(3件)  動的分解
定型の請求書処理             3件  足りる          3件を割当
問い合わせの一次対応         2件  足りる          2件を割当
バグ修正(影響範囲不明)     7件  足りない        7件を割当
競合調査(対象数不明)      12件  足りない       12件を割当

固定手順で対応できた仕事: 2 / 4
動的分解で対応できた仕事: 4 / 4

対応できた仕事のAI呼び出し(固定手順): 5回
全仕事のAI呼び出し(動的分解・分解と統合を各1回含む): 32回

分かれました。2件と4件です。固定手順は3ステップと決めてあるので、7件や12件の作業が必要な仕事には足りません。

足りないとどうなるか

ステップ数が足りない場合、途中までしか処理されずに終わります。しかも「終わった」という形で返ってくるため、不完全であることに気づきにくくなります。

ステップを多めに用意しておく手もありますが、限度があります。競合調査で12件必要になると分かっていれば12ステップ書けますが、それが事前に分かるなら固定手順で足りるという話に戻ります。

呼び出しは6倍以上になった

代償も出ています。呼び出し回数は5回と32回でした。動的分解には、分解そのものと結果の統合で各1回ずつ追加の呼び出しが要ります。

扱える仕事の数が2倍になった一方で、呼び出しは6倍以上です。扱える範囲を広げる代わりに、費用と時間を払う構成だと言えます。

対応できる仕事は倍になるが、呼び出し回数はそれ以上に増える。

固定手順(3ステップ)対応できた2対応できない24件動的分解44件−0%(0件)全4件の内訳。ただし呼び出し回数は5回と32回で、動的分解の方が6倍以上多い。
図1 ── 構成ごとの対応範囲と呼び出し回数
出典Anthropic Engineering「Building effective agents」2026-08-17 確認
This workflow is well-suited for complex tasks where you can't predict the subtasks needed
原文Anthropic Engineering「Building effective agents」 この内容の有効期限2027-02-17

オーケストレータ/ワーカーはどんなときに使うべきか

作業の数が事前に言えないときだけです。言えるなら固定手順の方が安く、速く、追いやすくなります。

オーケストレータ/ワーカーを使うかどうかの判断は、作業の数を先に言えるかの一点で決まります。

確かめ方

自動化したい仕事について、「何ステップで終わりますか」と聞かれて答えられるかを考えます。答えられるなら固定手順で足ります。

  1. 定型の処理: ステップ数が決まっている。固定手順
  2. 件数が変わるだけの処理: 同じ処理の繰り返し。固定手順を繰り返せばよい
  3. 調べてみないと分からない処理: 動的分解の出番
  4. 途中で方針が変わりうる処理: 同上

2番目に注意してください。「件数が可変」と「作業の種類が可変」は違います。100件を同じ手順で処理するなら、それは固定手順を100回回すだけです。

払うものを把握しておく

Anthropicは、エージェント的なシステムは応答の速さと費用を性能と引き換えにしていると述べ、その引き換えが見合う場面かを考えるよう促しています。

前の節の実測でいえば、呼び出しが6倍以上になりました。扱える仕事が増えることに、その費用を払う価値があるかという判断になります。

作業数が言えるなら固定手順。言えない場合だけ動的分解に進む。

必要な作業の数を先に言えるかいいえ動的分解を検討するはい同じ処理の繰り返しかいいえ固定手順で足りるはい固定手順を繰り返す。分解は不要件数が可変なだけの仕事は、動的分解の対象ではない。作業の種類が変わる場合だけ検討する。
図2 ── どちらの構成にするかの判断

この構成を採用すると、担当のあいだで受け渡しが発生します。何が落ちるかはエージェント間ハンドオフの記事で扱っています。

分けるかどうかの判断全般はマルチエージェント構成の記事、固定手順との比較は決定的ワークフローの記事にあります。

分解の結果を検査する分解を担うのもAIなので、必要な作業が漏れることがあります。結果をまとめる段階で、想定した項目がそろっているかを機械的に確認してください。漏れたまま「完了」と返ってくるのが、この構成で最も気づきにくい失敗です。
出典Anthropic Engineering「Building effective agents」2026-08-17 確認
Agentic systems often trade latency and cost for better task performance, and you should consider when this tradeoff makes sense.
原文Anthropic Engineering「Building effective agents」 この内容の有効期限2027-02-17

オーケストレータ/ワーカーとはどういう構成なのか

中心のAIが作業をその場で分解し、担当に割り振り、結果をまとめます。作業の数を事前に決めない点が特徴です。

オーケストレータ/ワーカーは、Anthropicが定義した構成の1つです。中心となるAIが作業を動的に分解し、担当のAIに委ね、その結果を統合する形をとります。

指揮者と演奏者の関係に近い形です。指揮者は何を演奏するかを決めますが、実際に音を出すのは演奏者になります。

作業の数を先に決めない

この構成の要点は、分解の結果が実行時に決まることです。3つに分かれるかもしれないし、10になるかもしれません。

固定した手順との違いはここです。手順を先に書く場合、ステップの数はコードを書いた時点で決まります。それを超える作業が必要になったとき、対応できません

予測できない場合に向く

Anthropicは、この構成が向くのは必要な作業を予測できない複雑な仕事だとしています。例として挙げられているのがコードの修正で、何ファイルに手を入れることになるかは始める前には分かりません。

余談 指揮者も間違える

分解を担うのもAIなので、分け方を誤ることがあります。必要な作業が漏れる、逆に不要な作業を増やす、といった形です。結果をまとめる段階で確認する仕組みを併せて用意することになります。

出典Anthropic Engineering「Building effective agents」2026-08-17 確認
In the orchestrator-workers workflow, a central LLM dynamically breaks down tasks, delegates them to worker LLMs, and synthesizes their results.
原文Anthropic Engineering「Building effective agents」 この内容の有効期限2027-02-17

よくある質問

常にこの構成にすればよいのでは?
呼び出し回数が増えます。この記事の実測では、対応できた仕事だけで比べると5回と32回でした。手順が決まっている仕事なら、固定した方が安く速く済みます。
作業数が読めない仕事とはどんなものですか?
Anthropicはコードの修正を例に挙げています。何ファイル触ることになるか、始める前には分からないためです。調査系の仕事も、対象がいくつ見つかるか事前には決まりません。
分解を間違えたらどうなりますか?
必要な作業が漏れたり、不要な作業が増えたりします。分解も判断なので、誤りは起こりえます。結果をまとめる段階で、想定した項目がそろっているかを確認する仕組みが要ります。
担当を並列で動かせますか?
動かせます。独立した作業であれば同時に走らせて時間を短縮できます。ただし互いの結果に依存する作業は、順に進める必要があります。

まとめ

  • 中心のAIがその場で分解して割り振る構成
  • 実測では固定手順が4件中2件、動的分解が4件すべてに対応した
  • 代償は呼び出し回数で、5回と32回の差が出た
  • 使い分けの基準は作業数が事前に読めるか

今日から始められること

  1. 自動化したい仕事の作業数が、始める前に言えるかを確認する
  2. 言えるなら固定手順にする
  3. 言えない場合だけ、分解と割り振りをAIに任せる
  4. 結果をまとめる段階で、必要な項目がそろっているかを検査する

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