AIに業務を任せるとき、選択肢は2つあります。手順をコードで決めて要所だけAIに聞くか、手順の組み立てごとAIに任せるかです。後者の方が賢そうに見えます。
今回は計算しました。同じ業務を100回流したときの呼び出し回数と、最後まで通る確率を出しています。結果を先に言うと、全部任せる構成は100件中11.4件が途中で落ちる計算になりました。
手順を誰が決めるかの違いです。コードが決めるならワークフロー、AIがその場で決めるならエージェントになります。
決定的ワークフローとエージェントの区別は、Anthropicが明確に定義しています。手順があらかじめコードで決まっているかが分かれ目です。
ワークフローでは、AIとツールが事前に決められた経路で組み合わされます。エージェントでは、AIが自分の処理とツールの使い方を動的に決め、達成の仕方を自分で管理します。
問い合わせメールへの返信を例にします。ワークフローなら「分類する → 該当する定型文を選ぶ → 差し込む → 下書き保存」とコードで並べ、分類の部分だけAIに聞きます。
エージェントなら「問い合わせに返信して」と伝えるだけです。どう進めるかはAIが決めます。検索するかもしれないし、いきなり書き始めるかもしれません。
エージェントの方が扱える幅は広くなります。ただしその代わり、毎回同じ結果になる保証がなくなります。同じ入力でも進め方が変わりうるためです。
| 決定的ワークフロー | エージェント | |
|---|---|---|
| 手順を決めるのは | コード | AI |
| 同じ入力での再現性 | 高い | 低い |
| 扱える幅 | 決めた範囲だけ | 広い |
| 失敗箇所の特定 | 容易 | 難しい |
| 途中からの再開 | できる | 難しい |
実際の製品や記事では、この2つが同じ「エージェント」という言葉で呼ばれています。手順が固定されているかどうかを確かめると、性質が見えます。導入を検討するときは、そこを聞くと判断しやすくなると編集部は考えています。
Workflows are systems where LLMs and tools are orchestrated through predefined code paths. Agents , on the other hand, are systems where LLMs dynamically direct their own processes and tool usage, maintaining control over how they accomplish tasks.原文Anthropic Engineering「Building effective agents」 この内容の有効期限2027-02-17
同じ業務を100回流したときの呼び出し回数と成功率を計算しました。呼び出しが増えるほど、最後まで通る確率が下がります。
決定的ワークフローの利点は数字で確かめられるので、計算しました。全部をAIに任せる構成と、手順を固定して1箇所だけAIにする構成を比べています。
前者は計画・各ステップ・まとめで合計6回、後者は分類の1回だけAIを呼びます。1回あたり98%成功すると仮定しました。
同じ業務を100回流したときの比較 構成 AI呼び出し 結果が揺れうる箇所 途中再開 全部エージェントに任せる 600回 600箇所 不可 手順を固定し、判断1箇所だけAI 100回 100箇所 可 AI呼び出しの差: 6倍 1回のAI呼び出しが98%成功するとき、業務1件が最後まで通る確率 全部エージェントに任せる 88.6% 手順を固定し、判断1箇所だけAI 98.0% 100件あたりの失敗見込み: 11.4件 → 2.0件
差が出ました。11.4件と2.0件です。1回あたりの成功率は同じ98%なのに、通す回数が6倍あるので、掛け合わせた結果が大きく変わります。
計算そのものは単純です。98%を6回掛けると88.6%になります。各段階が高い成功率でも、連ねると落ちます。
Anthropicも、エージェント的なシステムは応答の速さと費用を、性能と引き換えにしていると述べています。この引き換えが見合う場面かどうかを考えるべきだ、という指摘です。
もう1つの差が、失敗したあとの扱いです。手順が固定されていればどのステップで落ちたかが分かるので、そこから再実行できます。
手順ごとAI任せだと、同じ経路を再現できません。結果として最初からやり直すことになり、費用も時間も倍かかります。
1回あたりの成功率が同じでも、通す回数が増えると最後まで通る確率は下がる。
Agentic systems often trade latency and cost for better task performance, and you should consider when this tradeoff makes sense.原文Anthropic Engineering「Building effective agents」 この内容の有効期限2027-02-17
手順が決まっているならワークフロー、決まらないならエージェントです。迷ったら単純な方から始めます。
決定的ワークフローとエージェントの選択について、Anthropicは明確な推奨を示しています。可能な限り単純な解を見つけ、必要になったときだけ複雑さを増やすという順序です。
これは「そもそもエージェント的なシステムを作らない」という選択も含む、とされています。普通のコードで書けるなら、それでよいということです。
判断の基準は単純です。やることの順番があらかじめ言えるか。言えるならワークフローで足ります。
手順が言えるならワークフロー。言えない場合だけエージェントを検討する。
現実の構成は、どちらか一方になることは少ないはずです。全体はワークフローで組み、判断が要る箇所だけAIに聞くのが実務でよく見る形です。
呼び出し回数を減らすことは費用にも効きます。詳しくはエージェントのコスト制御の記事で扱っています。失敗したときに追える形にしておく方法はエージェント可観測性の記事にあります。
we recommend finding the simplest solution possible, and only increasing complexity when needed原文Anthropic Engineering「Building effective agents」 この内容の有効期限2027-02-17
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