エージェント基盤・プロトコル

マルチエージェント構成とは|3体に分けたら選択ミスが16.7%から5.9%に下がった

エージェントを複数に分けると何が変わるのか分けたときに失うものは何かどんなときに分けるべきなのか

エージェントに仕事を任せていると、だんだんツールが増えます。検索も、集計も、文章の作成も。するとどのツールを使うべきかの判断を誤りはじめます

対策として、役割ごとにエージェントを分ける構成があります。今回は数字を出しました。1体で6個のツールを持つ場合と、3体で2個ずつ持つ場合を比べています。選択を誤る確率は16.7%から5.9%になりました。

この記事の要点

  • 分ける利点は1体が持つツールが減ること。選択を誤りにくくなる
  • 実測では選択ミスの確率が16.7%から5.9%に下がった
  • 代償は受け渡しが発生すること。そこで情報が欠ける
  • 分ける前に、ツールを減らせないかを先に考える

マルチエージェント構成にすると何が変わるのか

1体が抱える範囲が狭くなります。持つツールが減り、指示も短くなるため、判断を誤りにくくなります。

マルチエージェント構成とは、役割ごとにエージェントを分ける作り方です。調査する係、集計する係、文章にする係、といった形で担当を決めます。

分ける目的は、1体が考える範囲を狭くすることにあります。持っているツールが少なければ、そこから選ぶ判断も簡単になります。

分担の決め方は2通り

1つは、順番をあらかじめ決めておく方法です。調査 → 集計 → 執筆、と固定します。手順が決まっている業務ならこれで足ります。

もう1つが、Anthropicがオーケストレーターと呼ぶ形です。中心となるAIがその場で作業を分解し、担当に振り分け、結果をまとめます

後者が向くのは、必要な作業を事前に予測できない場合だとされています。コードの修正でいえば、何ファイル触ることになるか始める前には分からない、といった状況です。

並列に動かす形もある

順番に渡していくだけでなく、同時に走らせる構成もあります。Anthropicは2つの型を挙げています。独立した作業に分けて同時に動かす形と、同じ作業を複数回走らせて結果を突き合わせる形です。

前者は速さのため、後者は精度のための構成になります。目的が違うので、混同しないよう分けて考えます。

余談 「エージェントが増える=賢くなる」ではない

体数を増やすと構成としては立派に見えます。ただし増えた分だけ受け渡しと管理が発生します。次の節で利点を数字にしますが、その後に代償も数えます。両方を見てから判断してください。

出典Anthropic Engineering「Building effective agents」2026-08-17 確認
In the orchestrator-workers workflow, a central LLM dynamically breaks down tasks, delegates them to worker LLMs, and synthesizes their results.
原文Anthropic Engineering「Building effective agents」 この内容の有効期限2027-02-17

3体に分けたら選択ミスが16.7%から5.9%に下がった

1体で6個のツールを持つ場合と、3体で2個ずつ持つ場合を計算しました。抱える定義量は半分、選択ミスは3分の1近くになります。

マルチエージェント構成の効果を確かめるため、計算しました。検索・集計・執筆の3種類の作業に、それぞれ2個ずつツールがある想定です。

1体で全部やる場合は6個すべてを持ちます。3体に分ければ、各体は自分の担当の2個だけを持ちます。

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1体で全部やる構成と、役割ごとに3体に分ける構成

構成        体数  1体が持つツール  1体が抱える定義  受け渡し
1体           1体            6個         1600tok       0回
3体に分割      3体            2個          800tok       2回

1体が抱える定義の差: 1600tok → 800tok(2.0分の1)

ツール1個あたり3%の選択ミスが起きうるとしたときの、1回の選択で誤る確率
  1体(6個)    : 16.7%
  3体(各2個)  : 5.9%

分割の代償: 受け渡しが2回発生し、そこで情報が欠ける可能性がある
  受け渡し0回の構成 → 0回
  受け渡し2回の構成 → 2回

下がりました。16.7%から5.9%です。選択肢が6個から2個に減ったので、そこから誤る余地も小さくなります。

抱える定義も半分になる

もう1つの効果が、1体が抱える定義量です。ツールの説明文は1個あたり相応の量があるため、6個持つか2個持つかで倍の差が出ます。

この量は毎回送られるので、費用にも効きます。渡す量を減らす考え方はコンテキスト設計の記事で扱っています。

ただし受け渡しが2回増えた

利点だけではありません。3体に分けると、調査から集計へ、集計から執筆へ、と2回の受け渡しが発生します。

受け渡しのたびに、前の担当が持っていた文脈の一部が落ちます。「なぜその資料を選んだのか」といった経緯は、渡す形式に入っていなければ消えます。

分けると選択ミスは減るが、受け渡しが増える。利点と代償はセットで動く。

単位: %1体で6個のツールを持つ16.7%3体で2個ずつ持つ5.9%−65%ツール1個あたり3%の選択ミスが起きうると仮定した計算値。ただし3体構成では受け渡しが2回発生する。
図1 ── 1体構成と3体構成の比較
出典Anthropic Engineering「Building effective agents」2026-08-17 確認
Sectioning : Breaking a task into independent subtasks run in parallel.
原文Anthropic Engineering「Building effective agents」 この内容の有効期限2027-02-17

どんなときに分けるべきなのか

先に試すべきはツールを減らすことです。それでも多い場合に、役割ごとに分けます。分けること自体が目的にならないようにします。

マルチエージェント構成にするかどうかは、順番が大事です。分ける前に減らせないかを考えます。

まずツールを減らせないか

前の節の計算は、ツールが6個あることを前提にしていました。しかしその6個が本当に必要かどうかは別の話です。

  1. 使われていないツールを外す。記録を見れば呼ばれていないものが分かる
  2. 似たツールをまとめる。引数で切り替えられるなら1つにできる
  3. 場面ごとに渡すツールを変える。分けなくても選択肢は減らせる
  4. それでも多いなら役割ごとに分ける

3番目が効く場合が多いはずです。エージェントを分けなくても、その場面で使えるツールだけ渡すようにすれば、選択肢は減ります。

分けるなら受け渡す形を決める

それでも分ける場合、受け渡す情報の形を先に決めます。自由な文章で渡すと、必要な情報が抜けても気づけません。

項目を決めた形式で渡せば、欠けたときに検出できます。この考え方はエージェントのセキュリティの記事でも扱っている、受け渡しを構造化するという話と同じです。

分ける前に減らせないかを確認する。分けるのは最後の手段。

ツールの選択を誤っているかいいえ分ける必要はないはい使うツールを場面ごとに絞れるかいいえ役割ごとに分けるはい分けずに、渡すツールを絞る2つ目で解決する場合が多い。分けるのは、絞っても選択肢が多いときに限る。
図2 ── エージェントを分けるかどうかの判断

単純な構成から始める

Anthropicの推奨は一貫しています。可能な限り単純な解を見つけ、必要になったときだけ複雑さを増やす。マルチエージェント構成も、必要になってから採用するものです。

構成が複雑になると、追跡も難しくなります。何体が何をしたかを追う方法はエージェント可観測性の記事で扱っています。

体数が増えると費用も増える各体がそれぞれシステムプロンプトとツール定義を持つため、体数の分だけ毎回送る量が増えます。1体あたりの量は減っても、全体では増える場合があります。実際にどちらが安いかは、呼び出し回数まで含めて計算してください。
出典Anthropic Engineering「Building effective agents」2026-08-17 確認
we recommend finding the simplest solution possible, and only increasing complexity when needed
原文Anthropic Engineering「Building effective agents」 この内容の有効期限2027-02-17

よくある質問

分ければ分けるほどよいのですか?
違います。分けるたびに受け渡しが増え、そこで情報が欠ける可能性が生まれます。また体数が増えると、全体で何が起きているかを追いにくくなります。必要な分だけ分けるのが原則です。
専用の枠組みを使う必要がありますか?
必ずしも要りません。役割ごとにシステムプロンプトとツールを分けて、順に呼び出すだけでも成立します。Anthropicも、複雑な枠組みより単純で組み合わせやすい形が成功していると述べています。
どうやって仕事を分担させるのですか?
分担の決め方は2通りあります。あらかじめ順番を決めておく方法と、中心となるエージェントがその場で振り分ける方法です。後者はAnthropicがオーケストレーターと呼ぶ形で、必要な作業を事前に予測できない場合に向きます。
並列に動かすこともできますか?
できます。独立した作業に分けて同時に走らせる方法と、同じ作業を複数回走らせて結果を突き合わせる方法があります。前者は速さ、後者は精度が目的になります。

まとめ

  • 分ける利点は1体が持つツールが減ること
  • 実測では選択ミスの確率が16.7%から5.9%に下がった
  • 代償は受け渡し。分けた数だけ情報が欠ける機会が増える
  • 先に試すべきはツールそのものを減らすこと

今日から始められること

  1. エージェントが持っているツールの数を数える
  2. その場面で使わないツールを外せないか確認する
  3. 外せない場合、役割ごとに分けられるか検討する
  4. 分けるなら、受け渡す情報の形を先に決める

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