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拒否応答の扱いとは|誤答を1件減らす代償が、0.29件から11.17件まで増えた

拒否応答の扱いとは何を決めるのかしきい値を上げると何が変わるのかどこで止めるべきか

「分かりません」と答えさせる設計は、誤答を確実に減らします。代わりに答えられたはずの問いも落ちます

その交換比を測りました。誤答を1件減らす代償は、0.29件から11.17件まで動きます。

この記事の要点

  • しきい値0.30で誤答率26.5%
  • 0.60まで上げると10.9%
  • 代わりに正解を1554件捨てる
  • 交換比は0.29→11.17件

拒否応答の扱いとは何を決めるのか

答えないという選択肢を用意し、いつそれを選ぶかを決めます。放っておくと選ばれません。

拒否応答の扱いとは、根拠が足りないときに答えさせず棄権させる設計です。何もしなければ、モデルはとにかく答えます。

許しがないと選ばれない

出典は最初の対策として不確かさを認めてよいと明示的に許可することを挙げています。書かなければ選択肢として存在しません。

指示に一言足すだけで済む話です。ところがいつ棄権するかを決めていないと、判断がその場任せになります。

何を見て決めるか

実務でよく使うのは検索で取れた文と問いがどれだけ重なっているかです。0から1の値にして、しきい値と比べます。

  1. 問いを受ける
  2. 根拠を探す。取れた文と問いの重なりを測る
  3. しきい値と比べる。下回れば棄権する
  4. 返す。答えるか、足りないものを伝えるか

2種類の間違い

この設計では、間違いが2種類に分かれます。答えられないのに答えたものと、答えられたのに棄権したものです。

しきい値を動かすと、片方が減って片方が増えます。どちらも同時には減りません。次の節で、その動き方を実際に測ります。

出典Anthropic「Reduce hallucinations」2026-08-18 確認
Explicitly give Claude permission to admit uncertainty.
原文Anthropic「Reduce hallucinations」 この内容の有効期限2027-02-18

しきい値0.60で誤答率は10.9%まで下がる

しきい値を上げると誤答率は確実に下がります。答えられた問いを捨てる量も一緒に増えます。

拒否応答の扱いでしきい値を動かすと何が起きるのかを、実際に走らせて測りました。用意したのは問い4000件です。

そのうち根拠から答えられるものが2791件、答えられないものが1209件です。根拠の当たり具合には両者が重なる範囲を持たせています。

しきい値ごとの結果

text
問い 4000件。根拠から答えられるもの 2791件・答えられないもの 1209件

棄権のしきい値  答えた  うち誤答  棄権した  うち答えられた  誤答率
      0.00       4000件     1209件        0件              0件    30.2%
      0.30       3706件      981件      294件             66件    26.5%
      0.40       3184件      704件      816件            311件    22.1%
      0.50       2318件      391件     1682件            864件    16.9%
      0.60       1388件      151件     2612件           1554件    10.9%
      0.70        594件       38件     3406件           2235件     6.4%
      0.80        156件        2件     3844件           2637件     1.3%

棄権を一切させないと、誤答率は30.2%です。3件に1件近くが根拠のない答えになります。

しきい値0.60まで上げると誤答率は10.9%になります。出典が言うとおり、確かに大きく減ります。

減った分の代償

同じ0.60の行を右まで見てください。棄権した2612件のうち1554件は答えられた問いです。

答えられる問いの過半を落としています。誤答率だけを見ていると、この列は視界に入りません。

誤答が減るほど、答えられた問いも一緒に落ちる。

0.00正しく答えた2791誤答1209棄権4000件0.4024807048164000件0.60123726124000件0.8038444000件問い4000件での実測。棒の下の数字は棄権のしきい値。
図1 ── しきい値ごとの内訳
出典Anthropic「Reduce hallucinations」2026-08-18 確認
This simple technique can drastically reduce false information.
原文Anthropic「Reduce hallucinations」 この内容の有効期限2027-02-18

誤答を1件減らす代償が、0.29件から11.17件まで増えた

しきい値の1段の効き方は一定ではありません。上げるほど、同じ効果を得る費用が跳ね上がります。

拒否応答の扱いで一番間違えやすいのが、しきい値を上げれば上げるほど得だと考えることです。効き方を1段ずつ測りました。

text
問い 4000件。しきい値を1段上げるたびの損得

しきい値の変更    誤答の減り  失う正解  誤答1件を減らす代償
0.00 → 0.30             228件       66件               0.29件
0.30 → 0.40             277件      245件               0.88件
0.40 → 0.50             313件      553件               1.77件
0.50 → 0.60             240件      690件               2.88件
0.60 → 0.70             113件      681件               6.03件
0.70 → 0.80              36件      402件              11.17件

最初の1段は0.29件です。誤答を228件減らすのに、失う正解は66件で済みます。ここは迷わず上げてよい範囲です。

最後の1段は11.17件です。誤答を36件減らすために、答えられた問いを402件捨てます。

どこで止めるか

止めどころは誤答1件と取りこぼし1件のどちらが重いかで決まります。この比を業務の側から出します。

誤答の手戻りが取りこぼしの3倍なら、代償が3件を超える手前で止めます。この計測なら0.60が境目です。

棄権のさせ方

棄権させるときに「分かりません」だけを返すと、使われなくなります。何が足りないかを一緒に返します。

出典は関連する対策として提示した文書の情報だけを使い、一般知識は使わないよう明示的に指示することを挙げています。棄権と組みにする指示です。

この指示がないと、根拠が薄いときに一般論で埋めた回答が返ります。ハルシネーション検出の記事では、その一般論を照合で拾えるかも測っています。

同じ1段でも、上に行くほど費用が跳ね上がる。

単位: 件0.70→0.8011.17件0.60→0.706.03件0.50→0.602.88件0.40→0.501.77件0.30→0.400.88件0.00→0.300.29件問い4000件での実測。値は、誤答を1件減らすために捨てる正解の件数。
図2 ── 誤答1件を減らす代償
余談 この計測での注意

根拠の当たり具合は式で作った分布です。実際の分布は検索の質で変わり、重なりの度合いも違います。ここで見せているのは、しきい値を上げるほど交換比が悪くなるという関係です。しきい値そのものは、自社のデータで引き直してください。

出典Anthropic「Reduce hallucinations」2026-08-18 確認
Explicitly instruct Claude to only use information from provided documents and not its general knowledge.
原文Anthropic「Reduce hallucinations」 この内容の有効期限2027-02-18

よくある質問

拒否応答は多いほうが安全ですか
安全ですが使えなくなります。この計測ではしきい値0.80で誤答が2件まで減る一方、答えられた問い2637件を棄権しました。
しきい値はどう決めますか
誤答1件と取りこぼし1件のどちらが重いかで決めます。この計測では交換比が0.29件から11.17件まで変わりました。
棄権させると使われなくなりませんか
伝え方次第です。何が足りないかと次にどうすればよいかを一緒に返せば、問い直しにつながります。
根拠の当たり具合はどう測りますか
検索で取れた文と問いの重なりを使うのが簡単です。この計測でもその値を0から1で表しています。

まとめ

  • 根拠が薄いとき答えさせない設計
  • 誤答と取りこぼしは交換関係
  • 交換比は上げるほど悪くなる
  • 止めどころは業務の重さで決める

今日から始められること

  1. 誤答が1件出たときの手戻りを金額で書く
  2. 棄権1件あたりの手戻りも同じ単位で書く
  3. その比を交換比の表に当ててしきい値を選ぶ
  4. 棄権時に何を返すかの文面を決める

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