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職務分離とは|200人中124人が抵触、経理課と法務課は100%だった

職務分離とは何を分けるのかどれくらい抵触しているのかどう直せばよいのか

申請を作る権限と、申請を承認する権限。この2つを同じ人が持つと、1人で完結してしまいます

利用者200人の権限を突き合わせたところ、124人が何らかの組に抵触していました。経理課と法務課は全員です。

この記事の要点

  • 作成と承認の両方を持つ人が105人
  • いずれかに抵触した人は124人(62.0%)
  • 経理課と法務課は100%
  • 職位が上がると自動的に抵触する

200人中124人が抵触、経理課と法務課は100%だった

利用者200人の権限を突き合わせました。抵触は例外ではなく、部署によっては全員に起きています。

職務分離がどれくらい守られているのかを、実際に走らせて数えました。用意したのは利用者200人と、同時に持ってはいけない組4種類です。

権限は部署と職位から決まるようにしました。加えて兼務や一時的な付与で余分に持つ場合も混ぜています。

javascript
const CONFLICTS = [
  ['申請の作成', '申請の承認'],
  ['見積の作成', '見積の承認'],
  ['請求の発行', '支払の実行'],
  ['契約の閲覧', '契約の締結'],
];

const hit = users.filter((u) => u.perms.has(a) && u.perms.has(b));
text
組み合わせ                    抵触した人数  割合
申請の作成 と 申請の承認                       105人   52.5%
見積の作成 と 見積の承認                        56人   28.0%
請求の発行 と 支払の実行                        25人   12.5%
契約の閲覧 と 契約の締結                        25人   12.5%

いずれかに抵触した人: 124人(62.0%)

上の表を見てください。作成と承認の両方を持つ人が105人、全体の52.5%でした。

職位が上がると自動的に抵触する

この105人は例外ではありません。課長と部長には承認の権限が付き、作成の権限は外れないためです。

つまり昇進した瞬間に抵触します。誰かが間違えたわけではなく、権限の設計がそうなっているという形です。

部署による偏り

text
部署          人数  抵触  割合
営業一課            25人   13人    52%
営業二課            25人   16人    64%
開発課             25人   12人    48%
管理課             25人    9人    36%
経理課             25人   25人   100%
人事課             25人    9人    36%
総務課             25人   15人    60%
法務課             25人   25人   100%

経理課と法務課は全員が抵触しています。請求の発行と支払の実行、契約の閲覧と締結が同じ部署に入っているためです。

この2つは業務として両方が必要な部署です。権限を外すという解き方が使えません。

部署によっては、全員が抵触する。

単位: 人経理課25人法務課25人営業二課16人総務課15人管理課9人各部署25人での実測。全体では200人中124人(62.0%)が何らかの組に抵触した。
図1 ── 部署ごとの抵触した人数
出典NIST 用語集「Separation of Duty (SOD)」2026-08-18 確認
For example, the person authorizing a paycheck should not also be the one who can prepare them.
原文NIST 用語集「Separation of Duty (SOD)」 この内容の有効期限2027-02-18

職務分離とは何を分けるのか

1人だけで悪用できるほどの権限を持たせない決まりです。作成と承認を分けるのが代表例です。

職務分離は、1人だけで完結させてはいけない仕事を分ける決まりです。

決まりの中身

NISTの用語集は、この考え方をいかなる利用者にも、自分だけで仕組みを悪用できるほどの権限を与えるべきではないという原則だとしています。

具体例も挙げられています。給与を承認する人が、それを準備できる人でもあってはならないという形です。

分ける組の例

  1. 作る人と承認する人。申請、見積、稟議
  2. 請求する人と支払う人。金銭が動く場面
  3. 変更する人と本番へ出す人。仕組みの変更
  4. 記録する人と確かめる人。会計や在庫

3番目は業務システムでも同じです。自分で書いた変更を、自分で本番に出せる状態は、この決まりに反します。

分け方は2通りある

NISTの用語集は、実現の仕方を2つに分けています。静的には、同じ利用者が実行できない役割を定義することで、動的には、アクセスの時点で制御を効かせることで強制できるとしています。

前の節で数えたのは静的な側です。権限の組み合わせだけを見ています。

余談 この計測での注意

権限の割り当てはこちらで置いた値です。実際の組織では部署と職位の対応がもっと複雑で、例外も多くなります。ここで見せているのは、権限の設計から自動的に抵触が生まれるという関係です。権限のまとめ方そのものはRBACの記事で扱っています。

出典NIST 用語集「Separation of Duty (SOD)」2026-08-18 確認
refers to the principle that no user should be given enough privileges to misuse the system on their own.
原文NIST 用語集「Separation of Duty (SOD)」 この内容の有効期限2027-02-18

分けられないときに実行時で判定する

業務として両方の権限が必要な部署では、権限を外せません。その場合は、実行の瞬間に判定します。

職務分離で行き詰まるのは、業務として両方の権限が必要な場合です。前の節の経理課と法務課がこれにあたります。

実行の瞬間に見る

権限を持っていること自体は認めたうえで、使う瞬間に条件を見るという方式があります。

NISTの用語集も、静的な方式と並べてアクセスの時点で制御を効かせることによって動的に強制できるとしています。

  1. 自分が作ったものは自分で承認できない。いちばん基本の形
  2. 金額で分ける。一定額を超えたら別の人が要る
  3. 2人以上が要る。1人目は誰でもよく、2人目は1人目と別
  4. 回数で分ける。同じ人が続けて処理できない

3番目についてNISTは、2人の規則が動的な職務分離の例であり、最初の利用者は権限のある誰でもよいが、2人目は最初の人と異なる権限のある利用者でなければならないと説明しています。

過去を見る方式もある

同じ用語集は、履歴にもとづく職務分離では、同じ主体が同じ対象に何回まで触れられるかを定めるという種類も挙げています。

業務でいえば同じ担当が同じ取引先を続けて処理しないといった決まりです。権限では表せません。

進め方

まず権限の組み合わせで数えます。前の節のように、どこに集まっているかが見えます。

そのうえで、権限を外せるものと外せないものに仕分けます。外せないものだけを実行時の判定に回せば、作る仕組みは最小で済みます。棚卸の話はアクセス権棚卸の記事で扱います。

外せる抵触と、外せない抵触を分ける。

充足 2 / 4抵触する組を書き出して数えている実測では200人中124人。どこに集まっているかが分かる外せない抵触を実行時の判定に回している経理課と法務課は業務として両方必要で、権限を外せない権限を外すことだけで解こうとしている業務として必要な部署では、外すと仕事が止まる昇進時に前の権限を見直していない承認が付いても作成が外れないので、自動的に抵触する利用者200人・抵触の組4種類での実測にもとづく。作成と承認の両方を持つ人は105人だった。
図2 ── 職務分離の点検項目
出典NIST 用語集「Separation of Duty (SOD)」2026-08-18 確認
Separation of duties can be enforced either statically (by defining conflicting roles, i.e., roles which cannot be executed by the same user) or dynamically (by enforcing the control at access time).
原文NIST 用語集「Separation of Duty (SOD)」 この内容の有効期限2027-02-18

よくある質問

職務分離とは何ですか
1人だけで悪用できるほどの権限を持たせない、という考え方です。作成と承認を分けるのが代表例です。
なぜ経理課と法務課が100%なのですか
業務として両方の権限が必要だからです。請求の発行と支払の実行、契約の閲覧と締結が同じ部署に入っています。
職位が上がると抵触するのはなぜですか
承認の権限が付くのに、作成の権限が外れないためです。両方を持った状態になります。
分けられない場合はどうしますか
実行の時点で判定する方式があります。自分が作った申請は自分では承認できない、という形にします。

まとめ

  • 1人で完結させないために権限を分ける決まり
  • 200人中124人が何らかの組に抵触
  • 経理課と法務課は100%
  • 分けられないなら実行時に判定する

今日から始められること

  1. 同時に持ってはいけない組を書き出す
  2. いまの権限データと突き合わせて人数を数える
  3. 部署ごとの内訳を見て、業務上避けられないものを分ける
  4. 避けられないものは実行時の判定に回す

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