評価・監視・ガードレール

Evals設計とは|真の勝率52%の差は、100問では60.8%しか正しく出なかった

何を試す仕組みなのか問題数はどれだけ要るのか評価者のゆらぎはどう効くのか

2つのやり方の真の勝率が52%のとき、100問では60.8%しか勝敗の向きが正しく出ませんでした。

1000問で90.1%です。小さい差を見分けたいほど、必要な問題数が増えます。

この記事の要点

  • 52%差・100問で60.8%
  • 52%差・1000問で90.1%
  • 60%差なら100問で97.0%
  • ゆらぎ±0.2でκ0.677

真の勝率52%の差は、100問では60.8%しか正しく出なかった

問題数が、見分けられる差の大きさを決めます。小さい差ほど多くの問題が要ります。

Evals設計で行うのは、出力が基準を満たすかの確認です。公式は評価は、模型の出力を試し、あなたが指定した書き方と中身の基準を満たすことを確かめると定めています。

2つのやり方を比べる場面では、問題数が結論の当てになりやすさを決めます。数えました。

問題数を変える

真の勝率を決めておき、その通りに勝敗が出るとします。2000回まわして、向きが正しく出た割合を測りました。

text
2つのモデルを問題ごとに比べる。2000回まわして、勝ち負けの向きが正しく出る割合を測る

真の勝率        20問      50問     100問     200問     500問    1000問
52%           48.8%    53.6%    60.8%    70.7%    81.0%    90.1%
55%           59.8%    70.0%    80.0%    92.0%    97.9%   100.0%
60%           75.5%    89.8%    97.0%    99.6%   100.0%   100.0%
70%           95.0%    99.8%   100.0%   100.0%   100.0%   100.0%

52%の行を見てください。20問なら48.8%で、半分より低い値です。

100問でも60.8%、1000問でようやく90.1%になります。

48.8%が意味すること

20問で52%の差を試すと、正しい向きが出るのは半分以下です。引き分けを誤りとして数えているためです。

つまりその結果からは何も言えません。勝ったと言っても、負けたと言っても、当たる確率がほぼ同じです。

60%の行なら100問で97.0%です。差が大きければ、少ない問題数でも判断できます

だから先に決めるのは、どれだけの差を見分けたいかです。そこから必要な問題数が決まります。

小さい差ほど、必要な問題数が急に増える。

向きが正しく出た割合(%)問題数(問)→107110052%・20問52%・100問52%・1000問60%・100問70%・20問2000回まわした結果。引き分けは誤りとして数えている。真の勝率が大きいほど少ない問題数で足りる。
図1 ── 問題数と、向きが正しく出た割合
出典OpenAI 公式ドキュメント「Evaluating model performance」2026-08-18 確認
Evaluations (often called evals) test model outputs to ensure they meet style and content criteria that you specify.
原文OpenAI 公式ドキュメント「Evaluating model performance」 この内容の有効期限2027-02-18

代表になっている標本かどうかが、数の前に効く

偏った問題を集めても、数を増やせば当たるわけではありません。何が代表かを先に決めます。

Evals設計では、試す問題の集め方が先にあります。公式は評価の中でアプリにどう振る舞ってほしいかを定めたので、次は、試験のデータの代表となる標本に対して、正しい出力を確実に生み出す指示を組み立てようと述べています。

「代表となる標本」が前提です。偏っていれば、数を増やしても偏った結論が出ます

代表になっていない例

  1. うまくいった例だけ集める。失敗の型が入らない
  2. 作った人が書いた例だけ。想定の外が入らない
  3. 簡単な例に寄る。全部通って差が出ない
  4. 古い例だけ。いま来る問い合わせと違う

3番目は前の節と関係します。全部通ると、真の勝率が50%に近づきます

すると必要な問題数が跳ね上がります。差が出ない問題を1000問集めても、90.1%にしかなりません

差の出る問題を集める

逆に言えば、差の出る問題を選べば少ない数で済みます。60%の差なら100問で97.0%でした。

実際に失敗した問い合わせを集めるのが早道です。そこには差が出る問題が入っています

何を正解とするかの記録も要ります。正解が曖昧なものを試験に入れると、次の節の一致の問題が出ます。

出典OpenAI 公式ドキュメント「Evaluating model performance」2026-08-18 確認
Now that we have defined how we want our app to behave in an eval, let's construct a prompt that reliably generates the correct output for a representative sample of test data.
原文OpenAI 公式ドキュメント「Evaluating model performance」 この内容の有効期限2027-02-18

評価者のゆらぎが±0.2あると、一致は83.9%まで下がる

人が付ける場合、基準の解釈がゆらぎます。そのゆらぎがそのまま結論の幅になります。

Evals設計では、繰り返し測ることが前提になります。公式は指示を繰り返し直していく過程で、その性能を見張り続けることと述べています。

見張る値がゆらいでいれば、比べられません。人が付ける場合のゆらぎを数えました。

ゆらぎの幅を変える

2人が合格か不合格かを付けます。真の出来ばえにゆらぎを足して、基準と比べるものとしました。

text
回答 5000件。2人が「合格か不合格か」を付ける
評価者は真の出来ばえにゆらぎを足して、0.5と比べているものとした

ゆらぎの幅  一致した割合  2人とも合格  2人とも不合格  κ係数
±0.05              95.7%         2382件          2401件    0.913
±0.10              91.8%         2298件          2293件    0.836
±0.20              83.9%         2106件          2087件    0.677
±0.35              74.0%         1848件          1853件    0.480
±0.50              66.9%         1683件          1660件    0.337

ゆらぎが±0.2で、一致は83.9%です。6件に1件は判断が割れます。

偶然を差し引いた度合いは0.677まで下がります。1が完全一致、0が偶然と同じです。

この幅が結論に効く

16%が割れるということは、誰が付けたかで結果が動くということです。

前の節の52%と55%のような差は、この幅に埋もれます。ゆらぎのほうが、見分けたい差より大きい状態です。

だから先にやることは、基準を書き出して合わせることです。一致を測れば、揃っているかが分かります。

揃え方と必要な人数は人手評価の記事で扱いました。同じ表を、人数の側から読んだものです。

余談 この計測での注意

勝敗の計測は、各問が独立に真の勝率で決まるという前提を置いています。実際には問題どうしに相関があり、その場合は必要な数がここより増えます。評価者のゆらぎも、真の出来ばえに一様な幅の誤差を足すという単純な形にしました。実際には、判断が難しい問題ほどゆらぎが大きくなります。ここで見せているのは、見分けたい差が小さいほど必要な問題数が急に増えること、評価者のゆらぎがその差を埋もれさせることの2つです。

出典OpenAI 公式ドキュメント「Evaluating model performance」2026-08-18 確認
Keep tabs on the performance of your prompts as you iterate on them.
原文OpenAI 公式ドキュメント「Evaluating model performance」 この内容の有効期限2027-02-18

よくある質問

Evalsは何を試しますか
出力が基準を満たすかです。指定した書き方と中身の基準に合っているかを確かめます。
問題数はどれだけ要りますか
見分けたい差によります。真の勝率52%なら1000問で90.1%、60%なら100問で97.0%でした。
少ない問題数ではどうなりますか
向きが逆に出ます。52%の差を20問で試すと、正しく出たのは48.8%でした。
評価者のゆらぎはどう効きますか
一致が下がります。ゆらぎ±0.2で一致は83.9%、偶然を差し引いた度合いは0.677でした。

まとめ

  • 出力が基準を満たすか試す
  • 問題数が見分けられる差を決める
  • 小さい差ほど多く要る
  • 評価者のゆらぎも結論を動かす

今日から始められること

  1. 見分けたい差の大きさを決める
  2. その差に必要な問題数を見積もる
  3. 評価者どうしの一致を測る
  4. 基準を書き出して揃える

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