評価・監視・ガードレール

人手評価とは|評価者を2人にしたら、1人のときより正解率が下がった

人手評価はどれくらいばらつくのか評価者は何人にするのか一致率が低いときどうするのか

同じ回答に2人が判定を付けると、ゆらぎが±0.35のとき一致は74.0%でした。

その2人で多数決を取ると正解率は80.3%です。1人のときの80.4%より下がりました

この記事の要点

  • ゆらぎ±0.35で一致74.0%
  • そのときκ係数は0.480
  • 2人の多数決は1人より悪い
  • 3人にすると誤りが33.0%減る

ゆらぎが±0.35あると、2人の一致は74.0%まで落ちる

一致率だけを見ると高く見えます。偶然の一致を差し引くと、印象がかなり変わります。

人手評価がどれくらいばらつくのかを、実際に走らせて測りました。用意したのは回答5000件です。

各回答には0から1の真の出来ばえを持たせました。評価者はその値にゆらぎを足して0.5と比べるものとしています。

ゆらぎを動かす

text
ゆらぎの幅  一致した割合  2人とも合格  2人とも不合格  κ係数
±0.05              95.7%         2382件          2401件    0.913
±0.10              91.8%         2298件          2293件    0.836
±0.20              83.9%         2106件          2087件    0.677
±0.35              74.0%         1848件          1853件    0.480
±0.50              66.9%         1683件          1660件    0.337

ゆらぎが±0.20だと、一致した割合は83.9%です。8割を超えているので、数字だけ見れば悪くありません。

ところがκ係数は0.677です。偶然の一致を差し引くと、7割にも届きません

偶然の一致を引く

合格と不合格が半々なら、でたらめに付けても5割は一致します。一致率の下駄は、そのぶんだけ高くなっています。

κ係数はその下駄を外した値です。出典は目安を.8を超える値は一般に良い一致とみなされる。0以下は一致なし、すなわち実質的に無作為なラベル付けを意味するとしています。

この目安に届くのは、ゆらぎ±0.10までです。±0.20では0.677で、すでに目安を割っています

一致率は高く見えても、偶然を引くと足りていない。

単位: %±0.0595.7%±0.1091.8%±0.2083.9%±0.3574%±0.5066.9%回答5000件での実測。同じ条件でのκ係数は順に0.913・0.836・0.677・0.480・0.337だった。
図1 ── ゆらぎごとの一致率とκ係数
出典scikit-learn「Metrics and scoring」(Cohen's kappa の節)2026-08-18 確認
Scores above .8 are generally considered good agreement; zero or lower means no agreement (practically random labels).
原文scikit-learn「Metrics and scoring」(Cohen's kappa の節) この内容の有効期限2027-02-18

評価者を2人にしたら、1人のときより正解率が下がった

偶数人にすると同数が出ます。倒す向きを決めた時点で、その向きへ偏ります。

人手評価で人数を増やすとき、2人から始めるのが自然に見えます。実際に測ると、そうではありませんでした。

ゆらぎ±0.35の評価者を増やし、多数決を取ります。真の出来ばえが0.5以上なら合格というのを正解として比べました。

人数を動かす

text
評価者の人数  正解と一致  誤り  1件あたりの手間  誤りの減り
1人                 80.4%    978件              1回           —
2人                 80.3%    983件              2回       -0.5%
3人                 86.8%    659件              3回       33.0%
5人                 88.6%    570件              5回       13.5%
7人                 90.1%    494件              7回       13.3%
9人                 91.5%    424件              9回       14.2%

2人にすると誤りは978件から983件へ増えました。手間が倍になって、結果は悪くなっています

同数をどちらに倒すか

2人の判定が割れたとき、どちらかに倒す必要があります。この計測では合格側に倒しました

結果として、2人のうち1人でも合格と言えば合格になります。不合格を見逃す向きに偏ったわけです。

3人にすると誤りは659件まで落ちます。1つ前と比べて33.0%減で、この計測で最も大きい改善でした。

κ係数で測れないもの

この節で使った正解率は、κ係数とは別のものです。出典もκの用途を異なる人手の付け手によるラベル付けを比べるためのものであり、分類器と正解を比べるためのものではないと断っています。

評価者どうしの一致と、正解に当たっているかは別の話です。全員が同じように間違えれば、一致率は高いままになります。

偶数人にすると、倒す向きへ偏る。

単位: 件2人983件1人978件3人659件5人570件9人424件回答5000件・ゆらぎ±0.35での実測。同数のときは合格側に倒した。
図2 ── 人数ごとの誤り件数
出典scikit-learn「Metrics and scoring」(Cohen's kappa の節)2026-08-18 確認
This measure is intended to compare labelings by different human annotators, not a classifier versus a ground truth.
原文scikit-learn「Metrics and scoring」(Cohen's kappa の節) この内容の有効期限2027-02-18

人数を増やす前に、ゆらぎそのものを減らす

人数は手間に直結します。同じ手間なら、基準を直したほうが効くことがあります。

人手評価の費用は、ほぼ人数×件数です。9人で見れば手間は9倍になります。

その9人でも正解率は91.5%でした。1人の80.4%から11ポイントの改善に、9倍の手間を払っています。

ゆらぎを減らすほうが速い

前の節の表を見返してください。ゆらぎを±0.35から±0.10へ下げると、2人でも一致率が91.8%になります。

ゆらぎは、判定の基準がはっきりしていないほど大きくなります。割れた件を集めて基準を書き直すほうが、人を増やすより安く済みます。

  1. 割れた件を集める。一致しなかった判定だけを取り出す
  2. 理由を聞く。なぜそう付けたかを両方から聞く
  3. 基準に書き足す。境目の例を明文化する
  4. 測り直す。同じ50件で一致率を出す

3人を超えたら測り方を変える

人数を増やすと、一致の測り方も変える必要があります。出典はκの適用範囲を2値または多クラスの問題に対して計算できるが、多ラベルの問題には使えず、また2人を超える付け手に対しても使えないと明記しています。

3人以上なら、別の指標に切り替えます。2人ぶんずつ取り出して平均するという当て方も使われます。

人手を機械に置き換える手もあります。LLMによる採点の記事では、その置き換えで何が変わるかを測っています。

人数より、ゆらぎを減らすほうが安い。

充足 2 / 4評価者の人数を奇数にしている2人だと同数を倒す向きに偏り、1人より正解率が下がるκ係数まで出している一致率83.9%でもκは0.677で、目安の.8を割っている一致率が低いまま人数を増やしている9人で91.5%に届くが、手間は9倍かかる一致率が高いから正しいと考えている全員が同じように間違えれば、一致率は高いまま残る回答5000件での実測にもとづく。ゆらぎ±0.35の評価者を使った。
図3 ── 始める前の点検項目
余談 この計測での注意

評価者は真の出来ばえに独立したゆらぎを足すという置き方です。実際の評価者は同じ方向へ揃って外れることがあり、その場合は人数を増やしても改善しません。真の出来ばえが分かっている状況も、実務ではまれです。ここで見せているのは、偶数人にすると倒す向きへ偏るという関係と、一致率とκの差です。

出典scikit-learn「Metrics and scoring」(Cohen's kappa の節)2026-08-18 確認
Kappa scores can be computed for binary or multiclass problems, but not for multilabel problems (except by manually computing a per-label score) and not for more than two annotators.
原文scikit-learn「Metrics and scoring」(Cohen's kappa の節) この内容の有効期限2027-02-18

よくある質問

人手評価はどれくらいばらつきますか
判定の境目にある回答でばらつきます。この計測ではゆらぎ±0.35のとき、2人の一致が74.0%でした。
評価者は何人にしますか
奇数にします。この計測では2人だと1人より正解率が下がり、3人で誤りが33.0%減りました。
なぜ2人だと悪くなるのですか
同数のときに片側へ倒す必要があるためです。この計測では合格側に倒したので、不合格を見逃す向きに偏りました。
一致率が低いときはどうしますか
人を増やす前に基準を見直します。ゆらぎ自体が大きいなら、人数を増やしても手間だけが増えます。

まとめ

  • 人が良し悪しを判定する評価
  • 境目の回答で判定が割れる
  • 人数は奇数にする
  • まず基準を疑う

今日から始められること

  1. 同じ50件を2人に判定させる
  2. 一致した割合とκ係数を出す
  3. 割れた件を集めて基準を書き直す
  4. そのうえで人数を決める

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