エージェント基盤・プロトコル

Copilot Studioとは|権限を引き継がないと、営業に給与テーブルが見えた

Copilot Studioとは何ができる基盤なのか社内データにつなぐと何が問題になるのかどう確かめればよいのか

社内のファイルをまとめてAIにつなぐと、質問すれば答えが返るようになります。ここで誰の権限で読んでいるかを決めていないと問題が起きます。

文書10件と利用者4人で数えたところ、権限を引き継がない構成では延べ22件が、本来見てはいけない相手に見える状態になりました。

この記事の要点

  • Copilot Studioは画面上でAIエージェントを組み立てる基盤
  • 権限を引き継がないと、利用者4人で延べ22件が見える状態に
  • 営業の利用者には給与テーブルも評価シートも見えた
  • 100部署なら延べ550件まで広がる

権限を引き継がないと、営業に給与テーブルが見えた

文書10件と利用者4人で数えました。権限を引き継がない構成では、延べ22件が見てはいけない相手に見えます。

Copilot Studioのように社内データにつなぐ基盤で、利用者ごとの権限を引き継ぐかどうかがどれだけ効くのかを数えました。用意したのは閲覧範囲の違う文書10件です。

判定は実際に実行しています。文書ごとの閲覧範囲と利用者の所属はコードに書いてあり、そこを変えれば結果も変わります。

javascript
const DOCS = [
  { name: '就業規則',           visibleTo: ['営業', '経理', '人事', '技術'] },
  { name: '来期の組織案',       visibleTo: ['人事'] },
  { name: '個人の評価シート',   visibleTo: ['人事'] },
  { name: '給与テーブル',       visibleTo: ['人事', '経理'] },
  { name: '取引先ごとの原価',   visibleTo: ['経理'] },
  { name: '未発表の新製品仕様', visibleTo: ['技術'] },
  /* ... 全10件 ... */
];

// 権限を引き継ぐ: その利用者が見てよい文書だけを対象にする
const withPermission = (u) => DOCS.filter((d) => d.visibleTo.includes(u.dept));
// 引き継がない: 取り込んだ文書を全部対象にする
const withoutPermission = () => DOCS;
text
利用者        本来見てよい  権限を引き継ぐ  引き継がない  見えてはいけない件数
営業のAさん             4件             4件          10件                   6件
経理のBさん             5件             5件          10件                   5件
人事のCさん             5件             5件          10件                   5件
技術のDさん             4件             4件          10件                   6件

見えてはいけない文書の延べ件数: 22件(4人合計)

営業のAさんに見えてしまう文書(6件)
  来期の組織案(閲覧できるのは 人事)
  個人の評価シート(閲覧できるのは 人事)
  給与テーブル(閲覧できるのは 人事・経理)
  取引先ごとの原価(閲覧できるのは 経理)
  未発表の新製品仕様(閲覧できるのは 技術)
  障害の詳細レポート(閲覧できるのは 技術)

内訳が具体的です。営業の利用者に給与テーブルも個人の評価シートも未発表の新製品仕様も見えています

漏れたことが表に出ない

この種の問題は静かに進みます。エラーは出ません。聞かれれば答えるだけです。

ですから気づくのは、誰かが知らないはずの内容を口にしたときになります。それまでの期間、何件どう答えていたかは記録がなければ追えません。

部署が増えると広がる

1人あたり平均5.5件です。この数字は部署が増えても変わりませんが、延べ件数は人数に比例して増えます。100部署なら550件です。

しかも文書を追加するたび、その文書が全員に対して見える状態で足されます。取り込む文書が増えるほど、確かめる範囲も広がります

確かめ方は単純

権限が効いているかどうかは、簡単に確かめられます。部署の違う利用者を2人立てて、同じ質問をして答えを比べるだけです。

答えが同じなら、権限は効いていません。この確認は導入前に1度やっておけば済みます。

エラーは出ない。聞かれれば答えるだけなので気づけない。

営業のAさん本来見てよい文書4見えてはいけない文書610件経理のBさん5510件技術のDさん4610件文書10件に対する実測。権限を引き継がない構成では、全員が10件すべてを参照できる。
図1 ── 利用者ごとの、参照できる文書の件数
出典Microsoft Learn「Copilot Studio overview」2026-08-18 確認
Build agents and workflows, connect them to your organization's data and systems, and publish them to the channels where your users already work.
原文Microsoft Learn「Copilot Studio overview」 この内容の有効期限2027-02-18

Copilot Studioとは何ができる基盤なのか

画面上でエージェントを組み立て、社内のデータにつないで、利用者が使っている場所に公開できる基盤です。

Copilot Studioは、画面上でAIのエージェントや処理の流れを組み立てて管理する基盤です。コードを多く書かずに使える形になっています。

組んで、つないで、出す

できることは3つに整理されています。エージェントと処理の流れを組み立て、組織のデータや仕組みにつなぎ、利用者がすでに使っている場所に公開するという流れです。

3番目が特徴です。新しい画面を用意しなくても、普段使っている場所から呼べる形にできます。

どう動くか

動きについても説明があります。与えた指示に従い、つないだ知識の源から情報を引き、道具を使って行動する。依頼を読み解いて次の一手を決める、という形です。

つまり指示と、つないだ範囲と、渡した道具の3つが動作を決めます。前の節の問題は、このうち「つないだ範囲」の話にあたります。

人の確認を挟める

処理の流れには、人が確認する段を含められるとされています。指示を実行したり、エージェントを呼んだりする段と並べて置けます。

承認の設計はHITLの記事で扱っています。件数が多いと読まずに押すようになる点も、そちらで数字とともに触れています。

余談 つなぐ範囲を決める作業が本体

触ってみて感じたのは、組み立てより、何をつなぐかを決める作業のほうが時間がかかるということでした。画面での組み立ては早く終わります。ところが「この文書は誰が見てよいか」は、聞いて回らないと分かりません。前の節の表は、そこを整理して初めて作れます。

出典Microsoft Learn「Copilot Studio overview」2026-08-18 確認
Microsoft Copilot Studio is a graphical, low-code studio for building and managing AI-powered agents and workflows.
原文Microsoft Learn「Copilot Studio overview」 この内容の有効期限2027-02-18

社内に広げる前に確かめること

権限が効いているかを、部署の違う2人で確かめます。組みやすさが、確かめる工程を飛ばす理由になりがちです。

Copilot Studioは組みやすい基盤です。ただし組みやすさは、確かめる工程を飛ばす理由にもなります

誰でも組めることの裏側

説明でも、深い技術の背景がなくても実用的なものを作れる点が利点として挙げられています。これは事実で、実際に早く形になります。

ところが、つなぐ範囲を決めるのは技術の話ではありません。誰がどの文書を見てよいかという、組織の話です。ここは早く終わりません。

広げる前の手順

  1. つなぐ文書を並べて、閲覧範囲を書き出す。ここがいちばん時間がかかる
  2. 部署の違う2人で同じ質問をする。答えが同じなら権限が効いていない
  3. 何を答えたかを記録する。後から範囲を確かめられる
  4. とりあえず全社に公開する。戻せない

4番目を避けてください。公開してから範囲を絞っても、それまでに答えた内容は取り消せません

記録がないと範囲も分からない

問題が見つかったとき、まず知りたいのは影響範囲です。誰が何を聞いて、何が返ったか。これが残っていなければ、影響を確定できません。

記録の設計はエージェント可観測性の記事で扱っています。社内文書を読ませる構成に固有の危険はプロンプトインジェクション対策の記事でも扱っており、社内の保管場所に外部由来の文書が混ざる点に触れています。

組み立ては早く終わる。つなぐ範囲を決める作業は早く終わらない。

充足 2 / 4文書ごとの閲覧範囲を書き出してあるこの表がないと、誰に何が見えるかを判定できない部署の違う2人で答えを比べた答えが同じなら権限が効いていない。導入前に1度で済む確認権限を引き継がずに全文書をつないでいる利用者4人で延べ22件が、見てはいけない相手に見える状態になった何を答えたかを記録していない問題が見つかっても影響範囲を確定できない文書10件・利用者4人での実測にもとづく。1人あたり平均5.5件が本来見てはいけない文書だった。
図2 ── 社内に広げる前の点検項目
出典Microsoft Learn「Copilot Studio overview」2026-08-18 確認
Because it's low-code, you can build capable solutions without an extensive technical background, while still giving professional makers the depth they need.
原文Microsoft Learn「Copilot Studio overview」 この内容の有効期限2027-02-18

よくある質問

つないだ文書は誰でも読めてしまうのですか
つなぎ方によります。利用者ごとの権限を引き継ぐ構成にすれば、その人が見てよい範囲に絞られます。引き継がない構成では、取り込んだ範囲すべてが対象になります。
漏れたことは分かりますか
分かりにくい種類です。エラーにはならず、聞かれれば答えるだけなので、誰かがその内容を口にするまで表に出ません。
何ができる基盤ですか
画面上でエージェントや処理の流れを組み立て、社内のデータや仕組みにつないで、利用者が使っている場所に公開できるとされています。
人の確認は挟めますか
挟めます。処理の流れの中に人が確認する段を含められると案内されています。

まとめ

  • Copilot Studioは社内データにつなぐエージェントを画面で組む基盤
  • 権限を引き継がないと、4人で延べ22件が見える状態になった
  • 100部署なら延べ550件まで広がる
  • 漏れは誰かが口にするまで表に出ない

今日から始められること

  1. つなぐ予定の文書を並べ、閲覧してよい範囲を書き出す
  2. 利用者ごとの権限を引き継ぐ構成になっているか確かめる
  3. 部署の違う利用者を2人立てて、同じ質問をして答えを比べる
  4. 答えが同じなら、権限が効いていない

実務で組んだCopilot Studioのワークフローには、値段が付きます

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